大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和39(あ)1871 判決

主 文

原判決中「当審における未決勾留日数中一一〇日をその刑に算入する。」

との部分を破棄する。

検察官のその余の部分に対する本件上告及び被告人の本件上告をいずれ

も棄却する。

理 由

被告人本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、

刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人山崎一男の上告趣意第一は、事実誤認の主張であり、同第二は、量刑不当

の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

福岡高等検察庁検事長井本台吉の上告趣意について。

記録によれば、被告人は本件につき起訴前である昭和三六年七月一七日勾留状の

執行を受け、その後同年九月一三日保釈許可により釈放されたが逃亡したため保釈

を取り消されて昭和三九年三月九日収監され、爾来第一審及び原審を通じて勾留を

継続されているものであるが、これよりさき、被告人は昭和三三年五月七日大分地

方裁判所において、傷害、銃砲刀剣類等所持取締法違反罪により懲役六月(未決勾

留日数一〇日法定通算)及び傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、傷害致死、

銃砲刀剣類等所持取締法違反、職業安定法違反罪により懲役五年(未決勾留日数六

〇日裁定算入)に処せられ、同判決は同年六月一七日確定し即日刑の執行を受け、

その後昭和三五年一二月三日刑の執行停止により釈放されたが、昭和三八年一〇月

二二日残刑の執行を受けることとなり同三九年二月二四日右懲役六月の刑の執行を

終り、翌二五日から右懲役五年の残刑の執行を受け、その刑期を昭和四一年八月二

五日に終了すべき予定で現在に至つているところ、被告人は本件第一審の判決に対

し昭和三九年三月二六日控訴を申し立て、原審はこれに対し同年八月一八日控訴を

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棄却するとともに原審における未決勾留日数中一一〇日を本刑に算入する旨の判決

を言い渡したものであることを明認できる。

してみれば、被告人の原審における未決勾留の全期間は、前示懲役五年の確定刑

の執行と重複執行されていたことが明らかであり、このように刑の執行と勾留状の

執行とが競合している場合には、懲役刑の執行としては一個の拘禁のみが存在する

ものと解すべきであるから、かかる場合に重複する未決勾留日数を本刑に算入する

ことは不当に被告人に利益を与えることとなり違法であるといわねばならない。そ

れ故、原判決中前記未決勾留日数を算入した部分は、刑法二一条の適用を誤つた違

法があり、原判決中の右部分は刑訴四一一条一号により破棄を免かれない。

よつて同四一三条但書により原判決中「当審における未決勾留日数中一一〇日を

その刑に算入する。」との部分を破棄し、その未決勾留日数を算入しないものとし、

その余の部分に対する検察官の上告は上告趣意として何らの主張がなく、従つてそ

の理由がないことに帰し、被告人の本件上告は全部理由がないから、刑訴四一四条、

三九六条により右各上告をいずれも棄却し、同一八一条一項但書により、当審にお

ける訴訟費用は被告人に負担させないこととし、裁判官全員一致の意見で主文のと

おり判決する。

検祭官 臼田彦太郎公判出席

昭和四〇年一月二二日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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